ハードタック——南北戦争の主食
1861〜1865年のアメリカ南北戦争で、北軍兵士の主食となったのが「ハードタック(Hardtack)」だ。小麦粉・水・塩だけで作られた極めて硬いビスケットで、その硬さから「歯の殺し屋」「木の板」などと呼ばれた。
ハードタックは1枚あたり約3センチ四方、厚さ1センチ。完全に乾燥させることで数年間保存できた。兵士たちはこれを水やコーヒーに浸して柔らかくしてから食べたが、虫が湧いていることも多く、「虫ごと食べる」のが当たり前だったという。
第二次世界大戦とK-レーション
第二次世界大戦中、アメリカ軍は「K-レーション」と呼ばれる個人携行食を開発した。生理学者のアンセル・キーズが設計したこの食料パックには、必ずビスケットが含まれていた。1日3食分のK-レーションには計9枚のビスケットが含まれ、1日のカロリーの約30%を担っていた。
日本軍でも「乾パン」が標準的な携行食として使われた。現在も自衛隊の非常食として乾パンが採用されており、戦時の遺産が現代に続いている。
現代の軍用食——MREとクッキー
現代のアメリカ軍の個人携行食「MRE(Meal, Ready-to-Eat)」にも、クッキーやビスケットは欠かせない存在だ。現在のMREには「ポップターツ」「M&Mクッキー」など、民間の菓子メーカーと共同開発した製品が含まれている。
軍用食の開発は民間食品技術の発展にも貢献してきた。フリーズドライ技術、真空パック技術、長期保存技術——これらの多くは軍用食研究から生まれ、現在のインスタント食品やアウトドア食品に応用されている。