中国の月餅——中秋節の象徴
中国の月餅(ゆえぴん)は、旧暦8月15日の中秋節に食べる伝統的な焼き菓子だ。蓮の実あんや卵黄を小麦粉の皮で包み、型で成形して焼く。表面には「中秋」「嫦娥」(月の女神)などの文字や模様が刻まれる。
月餅の歴史は唐代(618〜907年)まで遡るとされる。現代では伝統的な蓮の実あん月餅に加え、チョコレート・抹茶・アイスクリームなどの現代的なフレーバーも登場している。高級月餅は1箱数万円することもあり、ビジネスギフトとして重要な役割を果たす。
韓国のダルゴナ——SNSが生んだグローバルブーム
2020年、Netflixドラマ「イカゲーム」で登場した「ダルゴナ(달고나)」が世界的なブームを巻き起こした。砂糖と重曹だけで作るシンプルな飴菓子で、型抜きゲームの道具として使われる。
ダルゴナ自体は1960〜70年代の韓国の路上菓子だが、「イカゲーム」効果でTikTokに「ダルゴナチャレンジ」動画が溢れ、世界中で手作りする人が続出した。この現象は、コンテンツ(ドラマ)が食文化をグローバルに広める力を示す好例だ。
台湾のパイナップルケーキ——外交的土産菓子
台湾の「鳳梨酥(パイナップルケーキ)」は、バター生地にパイナップルジャムを包んだ焼き菓子で、台湾を代表する土産菓子だ。台湾語で「鳳梨(パイナップル)」は「旺来(繁栄が来る)」と発音が似ており、縁起物としての意味も持つ。
台湾政府は2000年代から「パイナップルケーキ外交」を展開し、外国要人への贈り物や外交的土産としてパイナップルケーキを積極的に活用している。食品が外交ツールになるという、ユニークな「ガストロノミー外交」の事例だ。
フィリピンのポルボロン——スペイン植民地の遺産
フィリピンの「ポルボロン」は、炒った小麦粉・砂糖・バター・粉ミルクを混ぜて型で固めた焼かない菓子だ。スペイン植民地時代(1565〜1898年)にスペインから伝わったポルボロン(スペインの崩れやすいクッキー)が、フィリピンの食材と融合して独自に進化した。
フィリピンのポルボロンはスペインのものより甘く、粉ミルクを加えるのが特徴だ。口に入れると「ほろほろ」と崩れる食感が特徴で、フィリピン人にとって懐かしい「おばあちゃんの味」として親しまれている。植民地主義の遺産が、被支配国の食文化として独自に発展した例だ。